■サガミシティ018 スターティア家別荘/14:40■

【家庭用業務CEMロイドを点検するプラチナブロンドの男】
「こちらの32体は全て異常無し……と。
 CEMロイドの動作に何か不具合が発生した際は、いつでも当社へご連絡ください」
【リチャード】
「お忙しい中、いつも局長自らご足労いただいての点検、感謝致します
 ドクター.玖式」
【アイスヴァイン=玖式(くしき)】
「長年、我が社の商品をご愛顧くださるお得意様への誠意です。
 スターティア様はCEMロイドやCEに広いご理解があり
 こちらとしても大変気持ちよくお仕事をさせていただいていますよ」
「ところで、CEM用の整備CEMロイドが見当たりませんが
 あれは今、どちらに?」
「CEM搭乗者の方から整備作業を見学したいとのご希望があり
 現在は地下格納庫で使用中でございます。
 三時には終了するかと」
「おや……では、おたくのL.C.フィールが一目惚れしたという噂の女性が
 今、この屋敷に?」



【地下格納庫から出てきた裕麻】
「最近のCEM整備CEMロイドってすごい高性能なのね!
 あたしもL.C.フィールの整備手伝おうと思ってたのに
 見てるだけで終わっちゃった」
【フレディ】
「あのCEMロイドは業者にお願いして専用に作ってもらったからね。
 L.C.フィールの設計者も整備の速さと正確さを絶賛してたよ」
「単純作業だけじゃなく、状況に応じてあれだけ的確な判断が可能だなんて……
 CEMロイドを労働力に採用する企業が年々増えてるわけだわ」
「ドーベルマン社は本当に良い仕事をしてくれるよ。
 あの会社のCEMロイドにはイギリスに居た頃からすごく助けられているんだ。

 ユマの家にもお手伝いさんを1体どう?」
「うーん、あたしみたいな一般人にとっては
 ドーベルマン社みたいな高級CEMロイドのレンタル料はまだまだ高価過ぎて……。

 それに、機械ばかりに頼ってると自分一人じゃ何も出来なくなっちゃいそう」
【聞き覚えのある男の声】
「CEMロイドの発達と人間の堕落は関係ありませんよ、お嬢さん」
「?」
「我が社の製品コンセプトは『もうひとつの手』。
 思い通りに動く自分の身体の一部だと考えれば
 自分一人では手が回らぬ作業をCEMロイドに頼る事には何の心配もありません」
(この人は……!
 確か、フレディが来日した時のホームパーティーに……)
「いらしていたんですね、ドクター.玖式!
 そうか、今日はCEMロイドの定期点検の日だったんだ」
「我が社、って?
 あの、もしかして……」
「初めまして、L.C.フィールのハートを射止めた幸運なお嬢さん。
 ドーベルマン社日本支部局長、アイスヴァイン=玖式と申します。
 以後、お見知りおきを」
「は……
 初めまして!彗星機士学校でフレディの個人教官を担当している椎成 裕麻です」
「ふむ……
 Sクラスの戦闘CEMを操る彗星機士学校の教官に
 こんな可愛らしいお嬢さんまでいらっしゃるとは、いささか驚きましたね」
「教官っていっても、あたしはまだ知識もCEM戦闘経験も浅い仮免で。
 さっきも自分より優秀なCEMロイドの整備能力に驚いてきたばかりです」
「あのL.C.フィールで戦功を上げれば現職教官への採用などあっという間でしょう。
 先日もセントラルエリアで多くの武装CEMが暴れたばかりですし
 最近は日本国内でも戦功のポイント稼ぎに困らないのでは?」
「そうですね、このところ謎が多い武装CEM犯罪も出てきて……。
 あたしも要請があればすぐ動けるよう準備はしてるものの
 今はフレディの指導や、L.C.フィールとの勉強で頭の中がいっぱいで」
「折角タイプG型Sクラスという素晴らしいCEMをお持ちなのですから
 もっと積極的にL.C.フィールをご活用されたらよろしいのに……。
 絶対に人に危害を加えてはならないCEMロイドでは、武装CEMに対処できません」
「CEMロイドのCE武装は国際CE条約で禁止されているんですよね。
 確か、使用できるCEコアにもクラス制限があるんですっけ?」
「まぁ、無害なFクラス程度でないと自律型機械人形には組み込めないのが実情です。
 戦闘CEMに使用されるような高純度のCE隕石になると
 CE隕子のある生身の人間が反応させない限り、エネルギーを発生させる事すら難しい」
「CEMにはCEMの、CEMロイドにはCEMロイドの
 人間には人間の出来ることを。
 ボクはそれでいいと思うな」
「CEMロイドに興味があればいつでも014区画にある我が社へ遊びに来てください。
 時間があればお茶でも飲みながらゆっくりお話を……。
 それでは、点検作業が残っていますので、わたくしはこれで」
>玖式博士は名刺にサインをして裕麻に手渡し、にこやかに去っていった
「すごいわね、ドーベルマン社の日本支部局長さん自ら点検に来てくれるなんて!
 最近じゃ、あの会社の最新型ハイエンド製品開発は本社があるドイツじゃなくて
 CE環境が整ってる日本で進めてるって聞いてるわ」
「ドクター.玖式はICEAの会員でCEに関しても知識の深い人だから
 一度ユマにも紹介しておきたいと思ってたところだったんだ。
 前のパーティーではユマに彼を紹介し損ねちゃったからね」
(……あの玖式さんって人ととはフレディの来日パーティーで会う前に
 一度、街で会ったことがあると思ったんだけど……)
「いつの時代もあの手の無能な連中が文明の発展を遅らせる。
 CEを活用できないアンソロこそ、早く地上から消えて欲しいものです」
(うーん、今思うと随分雰囲気が違うし
 人違いだったのかしら?)


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