■サガミシティ004 マーケットエリア/16:00■

【機械屋通りでショッピングする裕麻】
(やっぱり工業指定地帯の004区画だと機械の新製品入荷が早いわね。
 このカメラ、フレディのスクール転入祝いにプレゼントしちゃおうっと)
【ショップ店頭から聴こえる女性の声】
「あなたのお子様、CE反応のことでお悩みはありませんか?
 チヨタ工業から人類待望のCE隕子開発CEMが新登場でーす!」
(?)
【怪しい鎧兜型ヘッドギアを装備した女性店員】
「今回ご紹介するこのCE隕子開発ヘッドギア!
 なんと、頭に装備して眠るだけでCEに関係が深い脳の神経を刺激し
 お子様のCE隕子を活性化させる事ができるのです!」
「最新のCE研究により、CE隕子のレベルは生まれつきのものではなく
 隕子を100%出し切れていないだけという事が判明しました!

 さぁ、あなたのお子様も隕力が約束してくれる明るい将来を諦めないで!」
(脳の神経を刺激してCE隕子を活性化?
 信じられない!仮にも隕力工業CEM大手のチヨタ工業が
 こんなに堂々とCEで人を騙す商売してるなんて……!)
【聞き覚えのある男の大声】
「君ッ!
 CEで子供達の明るい未来を潰すような商売はやめたまえッ!」
「ん?
 何よ、あんた?」
アクションが大きい男
『カオスエネルゲアは地上の救世主か?
 否!カオスエネルゲアは滅びの申し子!!』
(!
 あの人は確か、隕力反対派政党の……)
【八郎太】
「ワタシとアナタでラブ・アース!
 僕たちの美しい地球を巣食うキケンなCE隕子を目覚めさせるだなんて
 この人類地球党・飛木庭 八郎太が断じて許さないぞッ!」
「人類地球党〜?
 あぁ、CE使えない社会不適合者の集まりね。

 残念だけどこのCEM、レベルFにすら反応できないあんたらアンソロには効果ないわよ」
「誰がそんな怪しげなCEM使うもんか!
 僕は隕力に影響されない人間本来の健康な体である事に誇りを持ってるんだ。
 君も地球の人間なら、宇宙からの隕力が地球を滅ぼす危険性を僕と一緒に考えて……」
【ヘッドギアに興味がありそうな主婦】
「ふぅ〜んナルホドナルホド、CE隕子って頭の神経刺激すればいいのねぇ。
 このCEM、CE反応のレベルアップに効果あるの?」
「はぁ〜い、勿論です!
 お子様のCE隕子を育てるなら成長期の今しかありませんわよ、奥様!
 ただし効果には個人差があります
「ン〜、ウチのマサヒロちゃん、来年はお受験だし
 レベルFからEになれるなら持っておいて損は無いかしらねぇ」
「ロクにCEが使えないと作業用CEMロイドに仕事取られる時代ですものねぇ〜。
 これさえあればお子様は将来、彗星機士だって夢じゃありませんわよ!

 ただし効果には個人差があります
「アラヤダ、それホント?
 じゃあそのお帽子おひとつちょうだい!」
「承知仕りまーす!
 お買い上げ誠に有難き幸せにゴザイマース!」
アテクシねぇ、昔、『CEレベルに恵まれた子が生まれたら彗星機士にしようね』って
 子供の将来を主人と語り合ってたのよねぇ〜。
 ママは諦めなくて良かったわ、マサヒロちゃん!」
「ちょ、ちょっと、そこのオバチャン!
 ただの宇宙の石コロに振り回される人生なんて子供にとって不幸でしかないことに
 子を愛する母親ならもっと早く気付くべきだ!」
「ったく、さっきから何なのよこのうるさいアンソロ野郎は……
 自分がCE使えないからって変なこと言わないでくれる?
 これが今の時代、真剣に子供の将来考えてる
いいカモ……親の姿ってもんなのよ!」
「人権を無視してCE差別を作り出している世間の風潮に流されてはいけないッ!
 それにそのCEM作ったチヨタ工業、裏では色々あくどい事をやってるって噂も……」
【ドスの効いた男の声】
「おう、ニーチャン」
「!」
【店で雇われているらしきガラの悪い男】
「ウチの会社にイチャモンつけて営業妨害するのはやめてもらおうかい」
「えっ?
 あ、いや、そのぅ、僕はただ、こんな奇抜な形のヘッドギア頭につけて寝たら
 お子さんのCE隕子が目覚める前に頭が三角形になっちゃうんじゃないかな〜って……」
【ガラの悪い男の手下らしきチンピラ】
「ッアァーンッ?
 チヨタの若君であらせられる千代多 富夢(トム)様自らご考案された
 鎧兜モデルの珍妙奇天烈お洒落デザインにケチ付けようってのかッァーンッ?!」
人類地球党の構成員だか何だか知らねーが
 そんなに演説したきゃあ、ウチの事務所でゆっくり……なぁ、センセイ?」
「えっ?!あの、ちょっと?!?!
 ストップ!ストッピング〜〜〜!!」
>八郎太はガラの悪い男達に囲まれ店の外へ連れ出された
(い……いけない!
 とりあえず助けないと!)



「日本は隕力至上主義社会なんかになっちゃったから
 CE反応問題に悩む人をターゲットにしたああいうCE悪徳商法が後を絶たないんだ……
 そうは思わないか、彗星機士学校仮免教官・椎成 裕麻ちゃん!」
「えっ?
 ええ、まぁ……」
「チヨタの奴ら、子供のCE隕子を目覚めさせるCEMまで開発していたなんて……。
 これじゃあますます隕力が世の中に蔓延っちゃうじゃんかッ!」
「ですから、それはさっきも説明したように人間のCE隕子は先天性だけのもので
 何かをすれば途中で隕子レベルが変わったり、
 生まれつきCE隕子を持たないアンソロの人達がリトロになれるなんてこと絶対に……」
「だが、未来ある子供達の真の平和を守るため!
 この地球上から全ての隕力を消し去るまで僕の戦いは終わらない。
 そうさ今こそ、ワタシとアナタでラブ・アース!」
(……
 聞こえてない……)
「それにしても、見たぁ?
 さっき裕麻ちゃんが彗星機士章見せた時のあいつらのビビりっぷり!
 やっぱり暴力に対抗するには、いつの時代も愛と正義と国家権力だよね〜」
「あ、そうだ。
 これ、助けてくれたお礼!」
「えっ?
 あの、あたしはお礼なんて、そんな……」
>八郎太は財布から一枚のステッカーを取り出しサインした
「はい!
 僕がデザインした人類地球党のラブ・アースステッカー!
 僕達の活動に興味があったら021区画にある事務所へいつでも遊びに来てね!」
「あ……ありがとうございます。
 あの、それで……飛木庭さんは今日どうしてここに?
 あなたも何か機械のお買い物ですか?」
「僕?
 ああ、政党活動でちょっとチヨタの工場にね」
「チヨタの工場で政党活動?
 アンソロの社員の方々の人権保護運動ですか?」
「うん。社員じゃなくて臨時のパートさんの雇用問題なんだけどね。
 うちの党ホームページのラブ・アース目安箱に寄せられた情報によると
 かなり劣悪な条件で働かされているみたいなんだ」
「チヨタ工業は何かと違法な労働で有名ですものね。
 何度も問題になってるのに、いつの間にか揉み消されてて……」
「ただ、なぜだか分からないけどパートさん本人が本当の事言ってくれなくてさぁ。
 母子家庭で小さな子供がいる人だから
 もっとマシな条件で雇ってくれるCE差別の無い会社を何度も勧めてるんだけどなぁ」
「うーん……話したくても話せない、
 辞めさせてもらえない事情があるのかもしれませんね。
 チヨタはさっきお店に居た怖そうな人達も雇ってるみたいですから」
「それなんだよなぁー。
 いくら僕がラブ・アース精神に溢れる地球愛と正義の戦士でも
 あのチヨタの暴力に立ち向かうには、今はチョット権力が欠けてて……」
あの、飛木庭さん
 アンソロの方々をCE差別から助けるご活動は立派だと思いますけど、
 何をするか分からないチヨタを相手に、今日みたいな危険な事はちょっと……」
「ウチの党、昔は支持者も多かったらしいんだけどなぁ。
 CEが意外と便利で、日本人は適性のある人の方が多いって分かるとみんな掌返しさ。
 最近は党の構成員も激減、政治資金集めの方も成果はサッパリで……」
(……
 聞こえてない……)
「!
 そうだ!いいこと思いついたぞ、裕麻ちゃんッ!」



(どうしよう……
 勢いに押されて飛木庭さんに連絡先教えちゃった。
 彗星機士学校の人間が、隕力反対派政党の構成員と知人って問題ないのかしら?)
「裕麻ちゃん!
 君も人類地球党に入って、僕と一緒にラブ・アースしようッ!」
飛木庭さんって悪い人ではないと思うんだけど
 誤ったCEの知識と、人の話を聞かない所がちょっぴり心配ね)

ドン!

>裕麻は誰かとぶつかった
「あっ、すみません!」
【子供を連れた化粧気の無い女】
「あ、いえ、こちらこそ……」
【首からピルケースを提げた少年】
「ねぇ、お母さん。
 このお姉ちゃん、背中に何か付いてるよ」
「え?」
「あら?ふふ……本当ね。
 ……ほら」
「…あー!」
>女は裕麻の背中に貼られていたラブ・アースステッカーを剥がして見せた
もう、飛木庭さんってば何時の間に……!
 ……?)
>裕麻は親子の体から刺激臭を感じた
何かしら、この匂い……)
「さぁカズくん、そろそろおうちに帰りましょうね」
「うん!
 ぼく、久しぶりにおうちでお母さんと一緒にお茶が飲みたいよ!」


NEXT





Copyright (C)Asaki Yumemishi All rights reserved.