■彗星機士学校 射撃訓練場/14:30■

【射撃訓練中の銀】
(やっと体も慣れては来たが……
 生身での射撃はまだまだ安定しないな)
【聞き覚えのある声】
「さすがは名細 銀君。
 銃の扱いも見事なものだ」
「!」
【阿姫羅】
「世界初の戦闘用CEMがトリプルテイルで空母を沈めた歴史的なシーンを思い出す。
 大戦の英雄も優秀な狙撃手だった。
名細家の血は争えないな」
(凱 阿姫羅……)
「あなたがなぜここに……」
私は暫く日本で仕事をする事になってね。
 今後もたまに、この学校へ出入りさせてもらう事になりそうだ」
「お仕事ご苦労様です、凱査察官」
「ところで名細君、今日は源女教官と一緒じゃないのかな?」
「源女教官は多忙な方です。
 個人教官といえど、常に自分の生徒と一緒に居るわけではありません」
「そうなのか。
 それは残念だな。彼女に挨拶をと思ったんだが……」
「そうだ。
 少しの間、君の訓練を見学させてもらってもいいかな?」
「見学は結構ですが、訓練の邪魔だけはしないでください」
>銀は射撃訓練を再開した
「うーん……。
 筋は良いんだが、君の射撃は少々感情の抑制に欠けるな」
感情の抑制……?
「『彗星機士は己が心を冷然たる石と化し、隕力と一体となれ』……
 御祖父様に教わらなかった?」
「……」
「感情というのは相手に悟られたら最後、向こうのペースにはめられてしまう。
 そんなに殺気立っていては、君は撃つ前に殺されてしまうよ」
「……あなたこそ、殺されないように気をつけた方が良いんじゃないのか」
「殺される?
 私が?誰に?」
「さぁ……?
 次の授業があるので、俺はこれで失礼します」



(ICEA第一級査察調査官・凱 阿姫羅。
 公開されているICEAでの経歴を見る限りでは
 作戦の指揮系統専門で、CEM戦闘とは縁のない男のようだったが……)

【ロミィ】
「名細君、あなたにお願いがあるの」
「サアディー査察補佐官が俺に?」
「あなたの個人教官、源女 阿御威さんの事なのだけれど……
 彼女と凱査察官がどんな間柄なのかは知ってる?」
「二人は古い知り合いではあるようですが……詳しい事は何も」
「あの二人は兄妹よ」
「兄妹……?!
 源女教官と凱査察官が?!」
「でも、血は繋がっていないらしいわ。
 育った家が一緒だったということだけれど……」
「……名細君。
 凱査察官を見る阿御威さんの眼、どう思った?」
「……少なくとも、好意的ではないように感じましたが」
「あれは……
 あの眼は……明確な、殺意」
「!」
「二人の間に何があったのかまでは私は知らないわ。
 阿姫羅さんは、まだ私を心の奥に踏み込ませてはくれない……」
(……
 やはり、この人はあの査察官のことを……)
「私達は彗星機士学校の査察の仕事が終わってもICEA本部へは戻らず
 しばらく日本で仕事をする事になるかもしれないの。
 もし二人が接触するようなら、阿御威さんが変な気を起こさないよう気をつけて」
「あまり戦場での事を持ち出したくはないけれど……
 あの女性は、人を殺せる人だから……」

(源女教官は凱の事を避けるどころか、殺したいほど嫌っている。
 なんだ……結局、あの男の無様な一人相撲という事か)


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