■彗星機士学校 廊下/17:00■

【暁】
「なー、銀!
 今日、学校終わったらどっか食べに行かない?
 この前、TCFでプログラム引き受けてくれたお礼がまだだし!」
【銀】
「すまん。
 今日はこの後、人と会う予定がある」
「そーなんだ!
 じゃあ、明日の放課後は?」
「……暁。
 あまり俺を外の遊びへ誘うのはやめてくれないか」
「う、ごめん……。
 そうだよなぁ、銀は勉強で忙しいもんな」
「それもあるが……
 家の事情もあってな。俺には遊ぶ金も無い」
「えっ、なんで?!
 銀の家ってすんごい金持ちなんだろ?
 あんなすっごいマンションにも住んでんじゃん!」
学校やCEM関連の必要経費以外、自由には使えないという事だ。
 金以外にも色々と管理されているしな」
「へぇー、そうだったんだ。
 こんなに頑張ってるんだから、ご褒美に好きなものくらい買ってもらえばいいのに……。

 なんか銀の家って、家族っていうより会社みたいだなぁ」
「……」
「でっ、今日は誰と会うの?銀の友達?
 オレにも紹介しろよなー!」
「別にそんなんじゃ……」
【聞き覚えのある声】
「チヨタの娘だろ?」
「!
 お前は、確か二年の……」
「J!」
【J】
「チヨタの娘、彗星機士学校に通う名細家の御曹司と今日会うってブログに書いてたぞ。
 オマエの事だろ?大戦の英雄のお孫さん、名細 銀君?」
「チヨタの娘って……ホントなの、銀?!」
「断れない家の事情だ。
 会社で例えると接待だな」
「『銀殿は武装CEMが暴れるトイCEMフェスの会場で
 身を挺して美幸姫の命を救ってくれた若殿様なのです』……だとさ。
 アチラさんは今日のお見合い、超ノリ気のようだぜ?」
「お見合いー?!」
「接待だと言っている」
「千代多の家で蝶よ花よと可愛がられて育った、正真正銘温室育ちの十六歳。
 政略の匂いがするとはいえ、名家はイイ所のお嬢様と縁があっていいねぇ」
>Jは携帯で千代多の娘の顔写真が載ったブログページを見せた
「おー、お茶とお花が趣味の大和撫子って感じのカワイイ子じゃん!
 コメントもすごい数だ。ファンも多いんだなぁ」
(これが千代多の娘、千代多 美幸姫(ちよた みゆき)……)
「でもさ、お見合いなんてしちゃっていいの?
 銀は源女教官のことが好きなんじゃないの?」
「……なんだそれは?」
「え?
 この間ICEAから来てた査察官の凱サンが、そうなんじゃないか〜って……」
「こっちの事情も知らない余所者の戯言を真に受けるな。
 源女教官は確かに美しい女性だが、教官は俺のCEMの教官だ。

 あの人の技量を尊敬する以外に、好きだ嫌いだの下衆な感情は無い」
「オマエらの年頃なら年上の美人にクラっときちまうのも分からなくないが、
 女に慣れてないヤツは同年代の女の子の方が気楽に付き合えると思うぜ。
 年上相手に背伸びして大人ぶるのも疲れちまうだろ?」
「俺をお前の様な女好きの軟派な男と一緒するな。
 それから暁。くれぐれもこの話、源女教官には……」
「あ、源女教官だ!
 知ってますかー、銀のお見合いの話!」


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