■サガミシティ003 サガミメディカルセンター/16:00■

【はさな】
「あのさぁ……
 腹減ってるなら海で魚でも釣ってくれば〜?って言ったのはアタシだけどさぁ……」
【ベッドの上の暁】
「いや〜、オレもビックリっスよ!
 まさか、ここの海にあんなでっかい魚がいるとは思わなくて」
「暁ィ!アンタ、どこまでボケてんの?!
 赤砂まみれのここの海の魚なんて食えるわけないでしょッ!」
「えっ、そうだったんスか?!
 海で魚釣れば食費が浮くと思ったんだけどなぁー」
「アンタが住んでたド田舎と同じにすんじゃないわよ。
 赤砂飛びまくってるこの土地じゃ、虫だって汚染されて無い雑草選んでるんだから」
【裕麻】
「まぁまぁ。暁くんが無事で良かったじゃない。
 心肺停止の状態で病院に運ばれたって学校に連絡が来た時には
 こっちの心臓が止まりそうなくらい驚いちゃったわ」
「そもそもサガミベイは立ち入り禁止区域でしょーが。
 よくもまぁあんな人気の無い寂れた場所で
 アンタを見つけて助けてくれた人が居たもんだわ」
「助けてくれた人に後でお礼を言わなくちゃね。
 暁くん、どんな人だったか分かる?」
「いやぁ、それが……海で溺れた後、目が覚めたのはついさっきで。
 助けてくれた人はオレが着てた服に付いてた名札の連絡先から
 学校に連絡してくれたみたいんなんですけど……」
「ああ、親御さんに入学祝に買ってもらったっていうあのド派手な色の服ね。
 でかでかと尻に縫い付けてたあの名札が、まさかこんな所で役に立つとはねぇ」
「機動警護学校に連絡してくれた人の声は若い女の人みたいだったけど
 名前は名乗ってくれなかったのよね。
 病院のスタッフさんに聞けば分かるかしら?」
「すぐ目が覚める程度の心肺停止ならアタシを呼び出すなっつーの!
 今日は折角のオフだったのにッ!おまけに今日行くはずだった合コンに
 はさなちゃんの運命のイケメン大富豪が居たかもしれないってのに……!」
【聞き覚えのある声】
「暁ちゃぁ〜〜〜〜ん!!」
「ん?」

バターン!

>勢い良く病室の扉が開いた
【泣きじゃくるほっかむりの婦人】
「いやぁああ〜〜〜〜!
 暁ちゃぁぁーーーん!死なないでぇぇぇ〜〜〜〜!!!」
【麦わら帽子の農夫】
「暁!
 お前、まーた死によったか!はっはっはー!」
「?
 あ……あの、あなた方は……?」
「ころなの産みたて卵で暁ちゃんの大好きなオムレツ作ってきたのに
 ああ、そんな……一足遅かっただなんて……!」
「いやいやいや!よう見てみぃ、かーさん!
 暁はちゃあんと生きとるわい!ほれっ!」
「えっ?
 ……」
「ああああああ〜〜〜〜!
 暁ちゃぁぁーーーん!生きてるぅぅ〜〜〜〜!!!」
【ニワトリを抱えたうつむき加減の少女】
「ちょっと!父さん、母さん!
 ここ病院なんだから、もっと静かに……」
「かーちゃん!
 と−ちゃん!
 輪子!」
「も……もしかして、暁の」
「ご家族、みたいね……」



【敬礼する日野出 晴空(ひので はれぞら)】
「CEMの学校さんにはうちの息子がいつもお世話になっとります!
 暁の父・日野出 晴空、母・フレア、妹・輪子、ペット・ころなであります!」
「機動警護学校の椎成です。
 こちらこそ、いつも暁君からのおすそわけで
 そちらのおうちで作った美味しいお野菜を頂いてしまって……」
「おおう、うちで作った野菜を美味しく頂いてくれちょりますか!
 良かったなぁ、かーさん!」
【日野出 フレア】
「良かった……良かったわね、あなた」
「まっこと良かった良かった!はっはっはー!」
【輪子】
「ちょっと、二人とも?
 普段でさえ成績悪いおにいは学校で先生に迷惑かけてるんだよ。
 今日だって、こうやって学校の皆さんを騒がせて……」
「え、そうなの?」
「普通の人はおにいみたいにポンポン死にかけないよ」
「あ、そういやそうだわい。
 いやはや、わしから見れば暁が死にそうっちゅうのはいつもの事で……
 お騒がせしてまっこと申し訳ない!」
「お騒がせだなんて、そんな……。
 彼を見ているとちょっとハラハラする時もありますけど
 元気な暁くんと一緒だと、周囲も明るくなってとっても楽しいですよ」
「それでですね、今回の事故のことですけれど
 暁くんが海で魚釣りをしていたら、大きな魚に引っ張られ溺れてしまったところを
 通りがかった方に救助されたみたいで……」
「また後ほど担当医の方から詳しい説明があると思いますが
 今のところ暁くんの体に異常は無し。
 ただ、数日ほど検査入院が必要との事です」
(良かった、おにいのCEMの先生が真面目でしっかりしてそうな人で。
 おにいから話を聞く限りじゃ、不真面目で非常識な教官って印象だったのに……)
【携帯で誰かと話し込むはさな】
「そーなの、今夜はそっち行けなくなっちゃってさぁ。
 ……え、マジでぇ?
 かなみ!そのイケメンの連絡先ゲットしといてよねッ」
(で、さっきから男の話ばっかりしてるこっちの人は誰なんだろ。
 おにいの友達?)
【オムレツを食べる暁】
「教官〜!裕麻サン〜!
 かーちゃんの作ったオムレツ、美味いっスよ!一口どうスか?」
「おっ?美味そうなモン食ってんじゃん。
 裕麻〜!アンタも食べなさいよ〜!」
「わわっ、教官!
 食べすぎ食べすぎっ!」
「ん〜♪この卵、ぴっちぴちの天然モノって感じ!
 学校でも学校外でも面倒見てやってるアタシへのお礼としちゃ全然足りないけど
 ま、今日はこれでカンベンしてあげるわ」
(え?
 まさか、おにいの教官って……)
「都会のナースはどえらい短いスカートじゃなぁと思っちょりましたが
 もしや、こっちのイケイケなお嬢さんが暁のCEMの先生で?」
「そうでーす、いつも息子さんにご迷惑をかけられてる
 個人指導担当の東はさなちゃん教官です!」
「あ……
 暁ちゃんがいつもご迷惑を……?」
「まさか、暁ちゃんが遅刻したりテストで0点採ったり
 スカートめくりしたり電柱におしっこしたり夜の校舎窓ガラス叩いてまわったりして
 はさなちゃん教官先生にご迷惑を……?!」
「あああああああすみませんすみません
 息子がご迷惑をおかけして大変申し訳ありません〜〜〜〜〜!!!」
「ちょ、ちょっと、はさな!
 あのっ、えっと……お母さん、落ち着いてください!」


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