scenario-08

シルバーチェイン



■サガミシティ000 銀の自宅マンション/21:00■

【通信スクリーン越しの事務的な男】
『こうして顔を合わせて話すのは久しぶりだな、銀』
【銀】
「ご無沙汰しています、兄さん」
【名細 鉄(なぐわし くろがね)】
『単刀直入に聞く。
 お前……先週の日曜、サガミシティのTCFへ行ったな?』
「!
 どうしてそれを……」
『無用な外出は慎めと言っておいただろう。
 お前が厄介な事件にでも巻き込まれたらどうする?
 現に、あの会場では武装CEMが暴れたそうじゃないか』
「心配をかけてすまない。
 でも、俺なら大丈……」
民間には俺達名細の人間を逆恨みする連中も大勢居るんだ。
 奴らから見れば、お前にも利用価値がある。
 少しは御祖父様の立場を考えろ、銀。
お前は名細の人間なんだぞ』
「……すまない。
 今後は気をつける」
『まぁいい。では、本題に入るが……
 お前、明後日は授業が終わったら時間を空けておけ。
 お前に会いたいという人間が居る
「俺に?
 誰だ?」
工業用CEM企業の千代多の娘だ。
 TCFでお前を見かけたらしくてな。コンタクトを取ってきた』
「千代多……?
 どうして俺に」
『知らん。
 二人きりで会って話がしたいそうだ』
「話……」
『平たく言えば、見合いというやつだ』
「……」
『放課後、学校に車を寄越す。
 うちは千代多と取引はしていないが、まぁ縁があっても損はない所だ。
 くれぐれも失礼の無いように……』
「ちょっと待ってくれ、兄さん。
 俺は見合いなど……」
『何だ、女の扱い方が分からんのか?
 女との会話など適当に相槌を打っておけばいい』
「そういう事ではなく……」
『お前に付き合っている女が居るわけでもないだろう?
 御祖父様のご忠告、『色に溺れることなかれ』だぞ』
「それは重々承知している。
 第一、俺はCEMの勉強で忙しくて女性の事を考える余裕などはない」
『ふん、それでいい。女絡みで何か起こると将来的に面倒だ。
 いつもその身は綺麗にしておけよ』
『そういえば……確か、お前の個人教官は若い女だったな。
 データで見たが、なかなか器量の良い女じゃないか。
 戦場で死線をくぐり抜けてきた隕力機兵には見えなかったぞ』
「ああ。CEMの腕も確かな女性だ」
『ああいう女をドレスアップさせてパーティーで隣に付き従わせたら
 さぞかし気分も良いだろうが……
 戦争勲功上がりの女教官など何を考えるか分からん。お前も気をつけろ』
「……」
『では、明後日の見合いの件。忘れるなよ』
「待ってくれ、兄さん!
 俺はまだ……」
『銀。
 お前のその酔狂な髪……
 御祖父様にご納得頂けるまで説得するのは大変だったぞ』
「……」
『千代多がうちと釣り合わないと感じたら適当にあしらっておけ。
 俺はこれから小堺長官との打ち合わせで忙しい。
 じゃあな』
「兄さ……!」
>鉄からの通信は一方的に切れた
(……)


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