シルバーチェイン |
【通信スクリーン越しの事務的な男】 『こうして顔を合わせて話すのは久しぶりだな、銀』 |
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【銀】 「ご無沙汰しています、兄さん」 |
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【名細 鉄(なぐわし くろがね)】 『単刀直入に聞く。 お前……先週の日曜、サガミシティのTCFへ行ったな?』 |
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「! どうしてそれを……」 |
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『無用な外出は慎めと言っておいただろう。 お前が厄介な事件にでも巻き込まれたらどうする? 現に、あの会場では武装CEMが暴れたそうじゃないか』 |
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「心配をかけてすまない。 でも、俺なら大丈……」 |
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『民間には俺達名細の人間を逆恨みする連中も大勢居るんだ。 奴らから見れば、お前にも利用価値がある。 少しは御祖父様の立場を考えろ、銀。お前は名細の人間なんだぞ』 |
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「……すまない。 今後は気をつける」 |
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『まぁいい。では、本題に入るが…… お前、明後日は授業が終わったら時間を空けておけ。 お前に会いたいという人間が居る』 |
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「俺に? 誰だ?」 |
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『工業用CEM企業の千代多の娘だ。 TCFでお前を見かけたらしくてな。コンタクトを取ってきた』 |
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「千代多……? どうして俺に」 |
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『知らん。 二人きりで会って話がしたいそうだ』 |
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「話……」 | |
『平たく言えば、見合いというやつだ』 | |
「……」 | |
『放課後、学校に車を寄越す。 うちは千代多と取引はしていないが、まぁ縁があっても損はない所だ。 くれぐれも失礼の無いように……』 |
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「ちょっと待ってくれ、兄さん。 俺は見合いなど……」 |
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『何だ、女の扱い方が分からんのか? 女との会話など適当に相槌を打っておけばいい』 |
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「そういう事ではなく……」 | |
『お前に付き合っている女が居るわけでもないだろう? 御祖父様のご忠告、『色に溺れることなかれ』だぞ』 |
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「それは重々承知している。 第一、俺はCEMの勉強で忙しくて女性の事を考える余裕などはない」 |
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『ふん、それでいい。女絡みで何か起こると将来的に面倒だ。 いつもその身は綺麗にしておけよ』 |
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『そういえば……確か、お前の個人教官は若い女だったな。 データで見たが、なかなか器量の良い女じゃないか。 戦場で死線をくぐり抜けてきた隕力機兵には見えなかったぞ』 |
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「ああ。CEMの腕も確かな女性だ」 | |
『ああいう女をドレスアップさせてパーティーで隣に付き従わせたら さぞかし気分も良いだろうが…… 戦争勲功上がりの女教官など何を考えるか分からん。お前も気をつけろ』 |
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「……」 | |
『では、明後日の見合いの件。忘れるなよ』 | |
「待ってくれ、兄さん! 俺はまだ……」 |
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『銀。 お前のその酔狂な髪…… 御祖父様にご納得頂けるまで説得するのは大変だったぞ』 |
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「……」 | |
『千代多がうちと釣り合わないと感じたら適当にあしらっておけ。 俺はこれから小堺長官との打ち合わせで忙しい。 じゃあな』 |
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「兄さ……!」 | |
>鉄からの通信は一方的に切れた | |
(……) |
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