scenario-05

トリガー



■ ―― ■

【赤い着物の少女】
「ねぇ……
 遠くへ行っちゃうって、ほんとうなの?」
【白い詰襟の少年】
「そうか……知ってしまったんだね。

 本当はイギリスに着いてから知らせるつもりだった。
 君の顔を見ると、決心が鈍るから……」
「いぎりす?いぎりすって遠いの?
 もう二度と逢えなくなっちゃう?」
「そんなは事ないよ。
 君と僕は、二人きりの兄妹なんだから。
 どんなに遠く離れていたって、君の事を忘れたりなんか……」 
「うそ!
 本当は血なんてつながっていないんでしょ?!
 ばあやが教えてくれたわ。わたしたち、本当の家族じゃないって……」
「……」
「家族じゃないんだもの…
 離れれば、きっとわたしの事なんて忘れてしまうわ……」
「離れたくない!
 ねぇお願い、わたしも一緒に連れていって!」
「ひとつ教えてあげようか。
 一緒だったものが離れることは、決して悲しいことではないんだよ」
「あの赤い星に導かれて、たとえ姿を変えてもいつかまた必ず結ばれる。
 ……だから、それまでいい子で待っていてくれるかい?」
「ほんとうなの……?
 約束してくれる?」
「ああ、誓うよ。
 だから阿御威……君もずっと僕だけを……」


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