scenario-02

―揺き― レッドグレイブ



■彗星機士学校 中庭/11:00■

【銀】
「すまないが、こういった物は受け取れない」
【CEMオペレーター科の女生徒】
「ちゃんと読んでからお返事してくださいっ!

 でないと私、諦めが……」
「俺は遊んでいる暇など無い。
 もう俺に構わないでくれ
私……私、入学式の時からずっとあなたのこと見てて……
 お友達からでもいいの!
 私、名細君の力になりたいの……!」
次の授業がある。では、俺はこれで……
「待って、名細君!
 もう少しだけ話を……」
「!」
>銀は自分の腕を掴もうとする女生徒の手を振り払った
「俺に触るな。
 邪魔だ」
「……っ!
【聞き覚えのある声】
「自分を慕う女性からの手紙くらい受け取ってやったらどうだ、名細君?」
?!
 きゃぁあー!
>女生徒は手紙を落としその場から走り去っていった
「源女教官。
 いつからそこに……」
【手紙を拾って読む阿御威】
「今時珍しいぞ、わざわざ紙に字を書いてくれるなんて。
 ……フフ。なんだ、可愛い事書いてるじゃないか」
「不謹慎ですよ教官。人の手紙を……」
「君が受け取らなかったから私が拾っただけだ。
 この手紙の役目はお前の手に渡らない時点で終わっている。
 何も問題は無い」
「それはそうですが……」
「そのハンパな甘さ……。
 君、女に慣れてないだろ?」
「慣れるも何も……
 色に迷って堕落したくはありませんから」
「それは君が敬愛する御祖父様からのご忠告か?
 大戦の英雄、名細 総仁(そうじん)殿の外国嫌いと女嫌いは有名だからな」
「祖父も俺も元々女に興味が無いだけです。
 それに、やるべき事がある俺には女の自己満足に付き合っている間など無い」
『女など』、ねぇ……。
 女に対するイメージがあまりよろしくないようだが

 何事も自分で経験するまで先入観に頼るべきじゃない」        
「無駄という結果が目に見えているとしてもですか?」
小さい頃からのヴァーチャル戦で君の脳内シミュレートは完璧というわけか?
 君は全く生身の人間と触れ合わない環境で育ったと聞いているが、
 その肌に触れて感じた事が無い物を理解できるとは、なんとも羨ましい想像力だ」
「想像力ではありません。
 推測に基づいた計算です」
「推測を経験に変えられる機会があっても、無駄だと思うものには見向きもしないんだな。
 無茶をするなら総仁殿の目が届かない今くらいしかできんぞ?」
「無茶とは?」
「女が嫌なら……そうだな……
 銀なんて名前、そうは居ない。
 いっその事、髪も銀色にでも変えてみたらどうだ?」
「くだらない。
 俺は祖父から受け継ぎ生まれ持った物に誇りを持っています。
 常識を疑われるつまらない自己主張など必要ありません」
「なるほどね。
 名門の名細家ともなると、世間体にはうるさいだろうしな」
「他人に世間体をとやかく言われるのは、非常識な証拠ですから」
「ご立派だねぇ……」


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